待ち望んでいた、ウィキッド再演に行ってきました。せっかくの初日だったので暑苦しめに感想を書いておこうと思います。
前日譚
私がウィキッドの話をするならば、まずは2007年に遡らなくてはなりません。
16年前のそのとき、私はまだ高校1年生でした・・・。
(何か始まった)
2007年、ミュージカルには縁遠い静岡の高校生だった私。母がうっすらミュージカル好きということもあり慣れぬ東京の景色に圧倒されながら汐留の「海」劇場につれていってもらいました。ライオンキングは小学生のとき見せてもらったことがあり、もちろん面白いと思ったのですが…。
ウィキッドの衝撃たるや。
まず、西の悪い魔女の前日譚というワクワクさせる設定。勧善懲悪のストーリーってつまんなくね?といっちょまえに捻くれていたティーンエイジャーにもドストライク。
「オズの魔法使い」とこう繋がるのかと唸らせる巧みなストーリー、 世界観に引き込む豪華な舞台装置、 そして何よりDefying Gravityですね。
ストーリー的にも重要な転換点であり、そこでエルファバが見せる決意の強さと歌唱のパワーが相まって、稲妻に打たれたような衝撃を受けたことを覚えています。(DGの感動を語るとき、「稲妻」「雷」という表現を毎回してしまうのだが本当にそのくらいビリビリとする衝撃だった) 歌を聴いて涙するということを生まれて初めて経験しました。私にとってウィキッドが、「(ミュージカルに限らず)舞台芸術に圧倒される」という原体験になったのです。
当時はキャストの名前をチェックするという概念を持っていなかったので、もったいないことにあのエルフィーが誰だったのかは今や闇の中です。(正確な日付も覚えてないし) が、時期的におそらく濱田めぐみ様だった…?という推測のもと、今も濱めぐ様のことをちらちら追っかけ、たまにメリーポピンズ(舞台)を観るなどをしています。大人になってから昔の初恋の人を見つけちゃったみたいな感じですね(???)
当時、まあ高校生だったということもありミュージカル観劇という趣味・習慣の確立までは至らなかったわけですが、東京在住会社員・女性・30代となり、LKやアナ雪きっかけに四季ファンとなったある日、あの「ウィキッド」を再演するというじゃあありませんか。シキチャン…!!
そこから10/19を迎えるまでは早かった。おそらく私と似たような原体験を抱えているファンも多い中、貴重な初日チケットが当たった者のもはや一種の責任感まで感じて「秋」劇場に向かったというわけです。
いやさすがに初日でベストコンディションのイディナ・メンゼル/濱田めぐみクオリティは出てこないのはわかってる あまりサントラ聴いてハードル上げすぎちゃいけない 全然ワクワクなんかしてないんだからね
— ニスタ (@ricky_a_u) October 15, 2023
↑開演数日前、必死に冷静になろうとしている私
2007年当時はDGの衝撃がデカすぎてストーリーの細かいところは正直あまり覚えていないのですが、それも逆にラッキーということで新鮮にも楽しめました。
10/19 当日の様子
役者さんの詳細な所作等というより、私の心境を中心にお届けします(需要)
実は「初日」という概念の現場に行くのは長年追っかけていた安室ちゃん現場を通しても多分初めて。 会場に着くなり、やはり熱気がすごい。この人たちがきっと私のように(私以上に)今日を待ちわびてた人たちだと思うとすでに胸が熱く… このご時世の中無事開演しそうってだけでももうよかったなあ😢と
四季のスタッフさん(バイト+普段は見かけない社員っぽい方々)もたくさん来ていらっしゃる。きっとちよき社長もいらっしゃったのでしょう。この場を用意してくれてありがとう…
キャスボ。
初日はやはり三井さん!エルサでどんどん深みと強さを増していった三井さんのエルファバ、楽しみすぎる。でも推し(?)の岡本瑞恵さんのエルファバも見てみたかったなあ…という心残りも実はありました。このときまでは。
いよいよ開演時間。マナー喚起の影アナもウィキッド仕様。うう…(もう何でも泣ける)
(どうでもいいけどウィキッドやアラジンの影アナは作品仕様になってるけどアナ雪とかは通常仕様なのなぜ?)
そして
GoodNewwwwwwwwwwwws!!!!!
(´;ω;`)ブワッ
以降、時系列に雑多な心の声をお届けします。 ※ネタバレあり。すでに観劇した人向け
なお、2007年当時見て以来ストーリーは結構忘れており(あれだけ衝撃を受けておいて…汗)、前提知識は公式HPに載っている程度のあらすじ、「オズの魔法使い」原作、サントラです。
- グリンダ、悪い人いなくなってよかったね~みたいな雰囲気出してるけどこの人エルファバを裏切ってこういうポジションにいるんだったっけ?それとも…?
- よく名前はきいてたけどこの方が真瀬さん。スタイル良…腕の長さとハイトーンどうなっとる??
- 母親の不倫相手、普通にクソ野郎やないかい。なんでそんな怪しいもん飲ますねん。すべての元凶…こいつがオズの魔法使いその人だったってオチありそう(御明察)
- エルファバが生まれる瞬間にウィキッド(というかエルファバ)のメインテーマ流れるの印象的。こういうのミュージカルっぽくていい
- 緑の赤ちゃん結構生々しい
- そういえば緑って欧米だとそれこそ邪悪というイメージがあるらしい(?)のでそれもあっての色設定なんだろうか
- ウィキッドといいアナ雪といい、竹芝にいる父親キャラは娘を呪縛しすぎでは。しかも長女が悪い魔女と呼ばれてしまうのも似てる…
- 三井エルファバが出てきた時の拍手!四季作品では珍しいのでは?みんな本当に待ってたんだねえ
- サントラに入り切ってない台詞・シーンが結構多いんだな
- 大学入ってから、周りにかみつくエルファバ始め結構コミカルなシーンが多くて面白い。三井さんはエルサのシリアスなイメージがあったので新鮮。かわいい。と、面白く描いているとはいえつらい人生だったね…
- グリンダが記憶以上に頭空っぽで笑った。杖のかわいい持ち方… とはいえグリンダ、一応魔法使いになりたいっていう望みはあるんだね
- 「魔法使いと私」。エルファバの最初の見せ場きた。三井さん予想以上にパワフルで素晴らしくてもう泣ける。岡本エルフィー見たかった…という不毛な思いはこの辺から消えゆく
- フィエロきた。イケメン設定とはいえ美青年すぎるが???
- ボックに声かけられてからのネッサはエルファバにちょい塩なように見えた。仲良しに見えたけどネッサはエルファバのことをどう思っているのだろう…。
- Dancing Through Lifeがエルファバ・グリンダの関係性においてこんな重要な曲だったとは。変な帽子を贈るという悪意が善意になって返ってきて、それに善意でさらに返すグリンダ。ヘンテコダンスがあんな胸熱シーンになるなんて聞いてませんよ
- Popular。コメディエンヌっぷり炸裂。キラキラ~キラキラ~
- ディラモンド先生~!!
- なるほどフィエロの株はここで上がるのか。ただのチャラ男ではなかった。そしてこのライオンがあのライオンということなのね
- (オズのおじさんが黒幕なことを思い出してきた私)な~にがセンチメンタルじゃ
- 原作にも出てきた翼のあるサル、こうやって生まれてきたのか。えぐい…
- Defying Gravityが来る予感…(姿勢を正す)
- 空飛ぶホウキもマントも現地調達して魔女の姿になったのか。巧い…凄い…。
- エルファバの決意もすごいけどグリンダの板挟み具合もつらいだろうなあ…
- 邪魔など、””””させない””””!!!!(ガナりめっちゃかっこいい!
- 嗚咽(客席のあちこちで)
- 嗚咽(自分)
そして幕間
いきててよかった
— ニスタ (@ricky_a_u) October 19, 2023
- 2幕。グリンダはすっかりオズの魔法使い側について人気者になってもどこか満たされない様子。フィエロとは全く嚙み合ってない。真瀬さんがこの時の衣装似合いすぎ。たしかにこの衣装宝塚でもありそうよね
- オズのおじさんが歌う「ワンダフル」はPopularのオズおじさん版のように見えた。周囲が自分をよく見てくれればいいよね~ という。「騙し騙され生きよう」というフレーズを100%否定できなくなった私、大人になってしまったな… そしてエルファバ、この呼びかけに一瞬揺らぎそうになった?という解釈でよい?
ネッサ役の若奈さんにアリエルのイメージがあっただけに2幕でのドロドロぶりがかなりショックだった。1幕でもちらっとよぎったけど、実はもとからエルファバのこと好きではなかったんだろうか…。そうであってもなくてもつらいシーン。昼ドラのようでもある。
As Long As You're Mineは曲単体では正直そこまで…だったけど、ストーリーの中に織り込まれるとやはり感動した。その後、まさかあんなことになるとは。
- フィエロのことで言い合いになるエルグリのやり取りが意外とコミカルさがあって救われた。その後フィエロが銃にくくりつけられたシルエットでカカシか!と気づいた。パッと見の軽さとカカシをかけてるんだとしたらめっちゃすごい。
- ネッサが本当につらい人生だった。あの悪のマグゴナガルみたいな悪のメリル・ストリープみたいなモリブルとかいう女許せんな。2幕序盤で「ネッサがエルファバの弱点です」と言ってしまったグリンダ、それがモリブルのコレを引き起こしてしまったと気づいたらいったいどうなるのか…(と思って観ていたけどそれは描かれなかった)
- No Good Deed(闇に生きる)もサントラで聞いてるだけではそこまで…だったけれど、このときエルファバが置かれた状況を思えばなんたる凄まじい曲なのか。正義感や善意がすべて空回りし、でも信念を捨てられず、邪悪な魔女として見られて生きていくことを選択するこの覚悟。絵面は完全に(もちろん演出として意図的に)悪い魔女なのだが、彼女以上に強く優しい人がいようか…ああ…
- モリブルがネッサを死なせたと明かされる場面。お人形でいればいいとモリブルに言われる場面。ああ…
- エルファバがドロシーを閉じ込めているシーン。(「オズの魔法使い」の流れ的に)ここでエルファバが死んでしまう…?と生唾を飲む。
- ↑の状態で聞くFor Goodはやばすぎるでしょう。ミュージカルTV(NHKでやってる「クラシックTV」の番外編) で見た、咲妃みゆさん/ケリー・エリスさんのデュエットが良くて、ずっと聴きたかった曲。客席からきこえるすすり泣きに引っ張られたのもありまた号泣。グリンダは良い魔女としてまた人前に戻るわけだが、この別れを経て偽りの姿をやり通す覚悟よ…
- そしてオズのおじさんと悪のマグゴナガルをシメるグリンダ。エルファバでなくグリンダがこれをやることの意味よ…(後述します)
- カカシになったフィエロと生きていく決意をしたエルファバ。グリンダにも生きていることを伝えずに…あああ…
- 「想いを託してくれた人のためにもこの身を捧げます」「良い魔女グリンダとして」サントラで何気なく聞いていたフレーズが鉛のごとき重さでのしかかってくる・・・そこで流れる""Good News!"" ""死んだぞWICKED!"" 言葉にならない
- 終劇
- 嗚咽
- カテコ。万雷の拍手とはこのこと。讃えずにはいられない
- ではなんかエルファバのメイク変わった?と思ったら三井さんが泣いてメイクが落ちちゃったのかな?
- 一度「ご来場ありがとうございました」的アナウンスが入ったけど鳴りやまぬ拍手。わかる
まあしにたいは大袈裟かもだけどなんか家に帰りたくない 竹芝に留まらせてくれ (ということで無意味にタリーズに居座る)
— ニスタ (@ricky_a_u) October 19, 2023
まとめ
Defying Gravity
観劇前からわかっていたことですが、もうとにかくDefying Gravityだけでチケット代なんて余裕で元が取れました。 三井さん、本当にありがとう。これはキャラクター的なものだろうけどエルサのときより少し声が太い気がしました。岡本さんや濱めぐ様の方が声質的には太いイメージだったのですが、三井さんの力強いDGにもう岡本エルフィーへの未練は雲散霧消しました。(小林さんもお聴きしたいですが)あんたがエルファバや。本当にかっこよかった…。
パフォーマーのすばらしさは大前提として、なんでこの曲こんなに感動するんだろう?と観劇後にちょっと考えてみたところ、
- 護衛たちに追いつめられている緊迫した状況
- 曲の中でさらに状況と感情が動いていき徐々にボルテージが上がっていく
- ラストのカタルシス
という構成があまりにも劇的だからなのかなと思いました。
特に「徐々にボルテージが上がっていく」表現がめちゃくちゃ巧い気がしています。(もちろん素人意見ですが)
1つは
- オズ陛下に謝っちゃいなさいよと(エルファバによかれと)説得するグリンダ→あくまで不正を正したいと断るエルファバ
- グリンダについてきてほしいと頼むエルファバ→その選択はできないグリンダ
- それでも(お互い納得した上で)別離を選ぶ二人
という今後の運命を決定づけるめちゃくちゃ重要な会話が目まぐるしく進んでいく点。 また、そんな会話がされている中で
- 自分の魔法の使い道の決意を固めていくエルファバ。
- その中でホウキを掴み、黒いマントを纏い、ステレオタイプな悪い魔女の姿へ近づいていき、WICKED誕生(タイトル回収)を予感させる
- 曲が盛り上がるにつれエルファバも物理的に高い位置へ昇っていきラストを予感させる
という視覚的な点、そして何より楽曲と歌い手(メイン・コーラス)のすばらしさが相まって、ミュージカルというもののポテンシャルが余すことなく発揮された名シーンになってるのかなと思っています。サントラで聞いてるだけでも大盛り上がりなのに、ストーリーをなぞりながらみるとさらに輝きを増すという。
書いているだけで興奮してきたのでもう1回(1回とは言っていない)見たい…
エルファバ・グリンダ・ネッサの相補関係
ストーリーを通して考えてみると、ネッサローズ・エルファバ・グリンダは三者それぞれに「私が欲しいものをあの子は持っている」という関係だったように思います。(相補的とは言わないかもですが…) 例えば
- エルファバになくてグリンダにあるもの:周囲からの好意
- グリンダ→エルファバ:フィエロと魔法の才能
- ネッサ→グリンダ:もちろんボック
- エルファバ→ネッサ:両親からの愛情
みたいな感じで。
特にネッサは実はエルファバに対して尊敬・嫉妬・疎ましさなど入り混じった複雑な気持ちを抱いているようにも見えて、突っ込んで描いてみてほしかったな~という気はします。(尺的にしょうがないけど)
この3人が含むところなく仲良くいられる世界線があったらいいなあと思いますが、でもこの関係性が物語を引っ張っているんですよね…。つら…。 進撃の巨人みたいに現パロしてくれないでしょうか(笑)
やはりメインなのはエル・グリの二人なわけで、この二人の補うような関係性が結果的に黒幕をシメたのがこの作品のミソですね。
オズの不正を正そうとしたのはもちろんエルファバで、力強く1幕ラストで飛び立つわけです。が、2幕では自分が虐げられ、ネッサを傷つけ(しかも結構ひどい傷つけられ方をし)、ネッサを失い、唯一の味方だったフィエロも失い、グリンダともやはり決別しNo Good Deed(闇に生きる)の境地に達します。
はっきり言って絶望的状況なのですが、それでも信念を曲げず邪悪な魔女と言われてもやってやる!というのがここです。いわゆる闇堕ちと絵面は似てるがむしろ真逆な強さを発揮するこの場面。これだけでもエルファバの高潔さにやられて相当やばいのですが、この絶望の後にグリンダが来てくれるのがもう最尊(読み:さいとうとい)シーンなわけです。
エルフィーが全てを失った後に残ったのは、希望の光たるグリンダでした。パンドラの箱のごとく。Defying Gravityのときにグリンダがオズ側に残ったからこそ、エルファバはグリンダに望みを託すことができたんですよね。二人が何もかも違ったからこその結末です。 もう、お上手!!!!としか言いようがありません。
No ”Good” Deedの後、For ”Good”が歌われるのも絶望→最後のたった一つの希望を暗示していそうでやばい。(ここは日本語の惜しいところ)
(なのに、水に溶けるエルファバを見ることしかできないグリンダ…もうやめてくれ…。)
そして、この後に見るキャッチコピー
「何もかも違うあなたがいる、だから世界は美しい」
「何もかも違うあなたがいる、だから世界は美しい」(反芻)
も~~~天才しかおらんのか??
気になること
とまあオズおじさんを倒すという最後の希望は提示されるのですが、グリンダはあの後エルファバが死んだと思い込んで生きていくのでしょうか。
「水に溶けるなんて馬鹿な噂だ」というフィエロの言葉をグリンダも聞いているので、落ち着いたらエルファバを探し出して再会してもおかしくはなさそう(してほしい)です。
でも誰にも見つかりたくない、というエルファバの意思を尊重し、生きていることに薄々気づいてもあえて会おうとはしない…ということも…